この記事の要点
- 時期:指針では、介護・看護作業に配置する際と、その後必要に応じて腰痛予防の教育を行うこととしています。
- 内容:教育項目は「発生状況と原因」「要因の特定とリスクの見積り」「低減措置」「腰痛予防体操」の4つです。
- 介護ならでは:全介助が必要な人にはリフト等を使い、原則として人力で抱え上げないことが前提です。持ち上げ方のコツだけで終わらせません。
- 研修後:対象者ごと・介助の種類ごとの作業手順、人員配置、休憩の取り方を見直し、定期的に振り返ります。
この記事が役立つ方
- 介護施設・訪問介護事業所の施設長、事務長、安全衛生・研修の担当の方
- 職員の腰痛による休職や離職が続き、研修を見直したいと考えている方
- 外部講師に腰痛予防研修を依頼する前に、内容の目安を知りたい方
なぜ介護職員の腰痛予防研修が必要なのか
厚生労働省の「令和7年の労働災害発生状況を公表」(令和8年5月27日公表)によると、令和7年の休業4日以上の死傷者のうち、医療・社会福祉施設などを含む保健衛生業は19,291人で、前年より424人(2.2%)増えました。事故の型別では、腰痛などの「動作の反動・無理な動作」が全産業で22,166人でした。
また、厚生労働省の「保健衛生業における腰痛の予防」のページでは、腰痛の発生件数が全体では長期的に減っている一方、保健衛生業では集計を始めた平成5年以降増え続けていること、保健衛生業の腰痛の発生率(死傷年千人率)が0.25と全業種平均の0.1を大きく上回っていることが示されています。
「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年改訂)では、介護・看護作業を腰痛が起きやすい作業の一つとして取り上げ、作業管理・作業環境管理・健康管理とあわせて、労働衛生教育を行うことを求めています。研修は、こうした対策全体の一部として位置づけると効果的に進めやすくなります。
介護職員の腰痛予防研修では何を教えればよいですか?
指針が示す教育項目は4つです。受講者の経験や知識に応じてレベルを調整し、業務に即した内容にすることとされています。介護施設で扱う内容の例を、項目ごとに整理しました。
| 指針の教育項目 | 介護施設で扱う内容の例 |
|---|---|
| 腰痛の発生状況及び原因 | 自施設で腰痛が出やすい介助場面(移乗、入浴、排泄、おむつ交換など)、前かがみ・ひねり・中腰の姿勢が続く理由 |
| 腰痛発生要因の特定及びリスクの見積り方法 | 対象者の状態、福祉用具の有無、作業姿勢、作業環境、人員体制などを確認し、リスクを「高・中・低」で見積もる方法 |
| 腰痛発生要因の低減措置 | 抱え上げない介助、リフト・スライディングシートなどの使い方、ベッドの高さ調整、膝や手をついて身体を支える姿勢 |
| 腰痛予防体操 | 作業前・休憩中・作業後に行うストレッチング。指針では、筋疲労回復、柔軟性、リラクセーションを高めることが目的とされています |
講義だけでなく、実際に使っているベッドや福祉用具を使った実技を入れると、翌日からの介助に結びつけやすくなります。
「正しい持ち上げ方」を教えるだけでは足りないのはなぜですか?
指針の介護・看護作業の項では、全介助が必要な対象者にはリフト等を積極的に使い、原則として人力による人の抱上げは行わせないこととしています。座ったり立ったりする姿勢をある程度保てる人には、スライディングボードなどの使用も検討するとされています。
そのため、「腰を落として持ち上げる」といったコツだけを教える研修では、抱え上げることを前提にした介助が続いてしまうおそれがあります。厚生労働省は、抱え上げを原則行わない「ノーリフティングケア」の考え方として、次の4つの対策を紹介しています。
- 要因の把握:腰痛の要因と回避策、福祉用具の使い方を教育で学ぶ
- リスクの評価:作業場所や作業方法を見直し、リスクを「高・中・低」で見積もる
- 回避・低減措置:作業姿勢・動作を見直し、抱え上げをスライディングシートなどに切り替える
- 再評価・見直し:職員の意見を定期的に聴き、対策に反映する
研修は、このうち「要因の把握」を担いながら、他の3つを職場で進めるきっかけにする役割があります。
研修の実技では何をすればよいですか?
指針の介護・看護作業の対策をもとに、実技で扱いたい内容を整理しました。
- 施設にあるリフト、スライディングシート・ボードなどを、職員が実際に操作してみる
- ベッドを、立ったまま前かがみにならない高さに調整してから介助する
- 壁に手をつく、ベッドや床に膝をつくなどして、身体を支えながら介助する
- 対象者の残っている力や協力の度合いに応じて、介助の方法を選ぶ
- やむを得ず人力で抱え上げる場合は2名以上で行う
- 休憩中に行えるストレッチングを、無理のない範囲で一緒に行う
痛みやしびれがある職員には、体操を含めて無理に参加させず、医療機関への相談を優先してもらいます。
担当者向け:研修の実施の流れ(例)
以下は進め方の一例です。施設の規模や勤務体制に合わせて調整してください。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 事前 | 職員アンケートで腰の負担を感じる介助場面を集める。福祉用具の有無と使われ方、腰痛による休業の状況を確認する |
| 研修当日 | 講義(発生状況と原因、リスクの見積り、低減措置)と、自施設のベッド・福祉用具を使った実技、腰痛予防体操を行う |
| 研修後1か月以内 | 負担の大きい介助から、対象者ごとの作業手順や必要な福祉用具、人員配置を見直す |
| 半年〜1年後 | 職員の意見を聴き、手順が守られているか、新たな負担が出ていないかを振り返る。新しく配置された職員には同じ内容の教育を行う |
夜勤のある施設では、全員が一度に集まるのは難しいことが多いため、同じ内容を複数回に分けて行う、短時間の実技を朝礼やミーティングに組み込むなどの工夫も考えられます。
研修のあと、職場で続けることは何ですか?
指針の介護・看護作業の項に示されている内容から、研修後に確認したい点をまとめました。
- 作業手順(作業標準)を、対象者ごと、移乗・入浴・排泄・おむつ交換・食事・移動などの介助の種類ごとに決め、対象者の状態が変わったら見直している
- 負担が特定の職員に集中しないよう、人員を配置している
- 休憩中にストレッチングや楽な姿勢がとれる場所と時間がある
- 段差の解消、部屋や通路の広さの確保、福祉用具を使いやすい場所への収納ができている
- 長時間労働や夜勤で腰の負担を強く感じている職員について、勤務形態の見直しを検討している
- 職場ごとの課題を踏まえた、腰痛予防のマニュアルなどを作っている
- 腰痛の発生を報告する仕組みがあり、報告をもとに対策を見直している
また指針では、腰部に負担のかかる作業に常時従事する労働者に対し、配置する際とその後6か月以内ごとに1回、医師による腰痛の健康診断を行うこととしています。研修とあわせて、健康管理の体制も確認しておきましょう。
外部の専門家に依頼すると、何をしてもらえるか
指針では、教育の講師は腰痛予防について十分な知識と経験を有する者が適当とされています。プライズネス健康経営サポートでは、理学療法士が施設を訪問し、介助場面や作業環境の確認、職員向けの腰痛予防研修(講義と実技)、セルフケアや体操の指導を行います。研修の前に現場を確認しておくと、その施設の介助場面に合わせた内容にできます。内容はサービス内容、費用の目安は料金プランでご確認いただけます(例:単発セミナー55,000円〜、職場訪問評価132,000円〜、定期サポート月額88,000円〜)。なお、本サービスは医療行為ではなく予防のための支援です。
まずは自施設の状態を知ることから
「研修をしたいが、何から扱えばよいか分からない」「福祉用具はあるのに使われていない」という段階からご相談いただけます。まずは職場の腰痛リスクを3分でセルフチェックし、その結果をもとに無料相談をご利用ください。
よくある質問
介護職員への腰痛予防教育はいつ行えばよいですか?
厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」では、介護・看護作業などに従事する労働者について、その作業に配置する際と、その後必要に応じて腰痛予防のための労働衛生教育を行うこととしています。新人研修だけで終わらせず、福祉用具の導入時や作業手順を見直したときにも行うと、現場で使える内容になります。
研修では何を教えればよいですか?
指針では、教育内容として「腰痛の発生状況及び原因」「腰痛発生要因の特定及びリスクの見積り方法」「腰痛発生要因の低減措置」「腰痛予防体操」の4項目が示されています。介護施設では、これに自施設の介助場面と、リフトやスライディングシートなど福祉用具の使い方の実技を組み合わせると実践につながります。
「腰を落として持ち上げる」コツを教えるだけでは不十分ですか?
指針では、全介助が必要な人にはリフト等を積極的に使い、原則として人力による抱上げは行わせないこととしています。持ち上げ方のコツだけを教えると、抱上げを前提にした介助が続くおそれがあります。研修では、抱え上げない介助の方法と、それを支える福祉用具や作業手順をあわせて扱うことが大切です。
研修の講師は誰に頼めばよいですか?
指針では、講師は腰痛予防について十分な知識と経験を有する者が適当とされています。施設内の担当者が行う場合も、外部の専門職に依頼する場合も、自施設の介助場面や福祉用具を前提に内容を組み立てられるかを確認してください。
プライズネスに依頼すると何をしてもらえますか?
理学療法士が施設を訪問し、介助場面や作業環境の確認、職員向けの腰痛予防研修(講義と実技)、セルフケアや体操の指導を行います。費用の目安は単発セミナー55,000円〜、職場訪問評価132,000円〜です。医療行為ではなく予防のための支援で、痛みやしびれなどの症状がある方には医療機関への相談をおすすめしています。
関連する記事
この記事は、公的機関などの公開資料をもとにAIを活用して作成しています。制度や数値は変わることがあるため、ご判断の際は出典の最新情報をご確認ください。医療上の判断が必要な症状については医療機関にご相談ください。
出典・参考:
厚生労働省「職場における腰痛予防対策指針」(平成25年6月18日改訂。解説・作業態様別の対策を含む)
厚生労働省「保健衛生業における腰痛の予防」
厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況を公表」(令和8年5月27日公表、確定値)
