札幌 健康経営・労災予防コラム

介護・製造・運送の現場でできる、腰痛・転倒予防の実践ポイント

厚生労働省の「職場における腰痛予防対策指針」をもとに、介護・製造・運送それぞれの現場で今日から始められる腰痛・転倒予防を、理学療法士の視点で整理します。

介護施設で移乗介助のたびに腰が痛む。工場で立ちっぱなしの作業が続き、ベテランほど腰と膝を痛めている。倉庫やトラックで重い荷物を上げ下げするうちに、いつのまにか腰痛が慢性化している——。こうした「現場の腰痛」は、我慢や気合いで乗り切るものではありません。

札幌で企業の健康支援を行う理学療法士の視点から、介護・製造・運送それぞれの現場で、今日から始められる腰痛・転倒予防の実践ポイントを整理しました。「うちの現場にも当てはまる」と感じたら、対策の第一歩として読み進めてください。

職場の腰痛は「気合い」では防げない

厚生労働省によると、職場での腰痛は休業4日以上の職業性疾病のうち約6割を占める、最も多い労働災害です。とりわけ社会福祉施設や陸上貨物運送業では、腰痛の発生率が全業種平均を大きく上回っています。

大切なのは、腰痛が「たまたま運悪く起きるもの」ではないという点です。厚労省の指針は、腰痛の発生要因を動作要因(重い物の持ち上げ、人の抱え上げ、ひねり)、環境要因(滑りやすい床、段差、寒さ)、個人的要因(年齢、筋力・柔軟性の低下)、心理・社会的要因(一人作業、過重な勤務)の4つに整理しています。現場ではこれらが複合的に重なって腰痛が起きるため、声かけだけでは防ぎきれません。作業動作・職場環境・働く人の身体、この3つをまとめて見直すことが近道になります。

介護・福祉の現場 ― 移乗・入浴介助の腰痛を減らす

介護現場の腰痛の最大の原因は、移乗・入浴・排泄介助で繰り返される「人を抱え上げる動作」です。厚労省の指針は、腰に著しく負担がかかる移乗介助等では原則として人力だけで抱え上げないことを求め、リフトやスライディングボード等の福祉用具の積極的な活用を推奨しています。

現場でできることとして、すでにある福祉用具を「面倒だから」で終わらせず正しく使いこなすこと、ベッドの高さを介助しやすい位置に調整すること、利用者に身体を近づけ膝を使って重心を落とすこと、そしてベテラン職員ほど定着しがちな自己流の介助動作を定期的に見直すことが挙げられます。動作を外部の専門家がチェックするだけでも、負担の大きい癖に気づけることがあります。

製造業の現場 ― 立ち作業・重量物・反復動作への対策

製造業では、長時間の立ち作業、重量物の運搬、同じ動作の繰り返しが腰と肩に負担を蓄積させます。熟練工の高齢化が進む職場では、転倒や墜落のリスクも同時に高まります。

対策としては、重量物の取り扱いを電動昇降装置や搬送補助具で省力化すること、作業台の高さを見直して前かがみ姿勢を減らすこと(作業台はひじの角度がおよそ90度になる高さが目安)、疲労軽減マットやフットレストを導入すること、立ち作業と座り作業を交互に組むこと、重量物を分担制にすることなどがあります。設備投資が必要なものばかりではなく、比較的取り組みやすい対策から始められます。

運送・倉庫業の現場 ― 荷役作業と長時間運転の腰痛

陸上貨物運送業は、腰痛の発生率が全業種の中でもとりわけ高い業種です。荷物の積み下ろし(荷役)での重量物の扱い、荷台からの飛び降り、長時間運転による同一姿勢が、腰への負担を積み重ねます。

荷役作業では腰を落として荷物を身体に近づけ膝を使って持ち上げること、台車やパレットで直接持ち上げる回数と重量を減らすこと、荷台からは飛び降りずステップを使うこと、長時間運転では休憩ごとに姿勢を変えて簡単なストレッチを取り入れること、運転席のシートを腰に負担の少ない位置に調整することが有効です。ドライバー不足で1人の休業が配送計画に直結する職場ほど、日々の短時間のコンディショニングが効いてきます。

転倒予防も、腰痛対策と一体で考える

腰痛と転倒は、別々の問題に見えて深くつながっています。滑りやすい床や段差、暗い作業場といった環境要因は、腰痛の原因であると同時に転倒の原因でもあります。転倒の瞬間に腰へ過大な負荷がかかり、腰痛が発生することもあります。

とくに札幌・北海道では、冬季の凍結路面や積雪による転倒災害が大きな課題です。60歳以上の従業員が増えるなかで、筋力やバランス能力の低下は外から見えにくく、本人も気づかないうちに転倒リスクが高まっていることがあります。床面の滑り対策や段差の解消に加えて、働く人の筋力・バランス・歩行といった身体機能を把握しておくことが、転倒予防では重要になります。

動作・環境・身体をまとめて見直すのが理学療法士の役割

現場の腰痛・転倒は、作業動作・職場環境・働く人の身体機能という3つの要因が複雑に絡み合って起きます。どれか1つだけを対策しても、なかなか成果につながりません。理学療法士は、身体とケガの専門家として、この3つをまとめて評価できる国家資格者です。実際の作業を現場で見て、負担の大きい動作を特定し、従業員の筋力やバランスを測定し、その職場に合った改善策を提案します。厚労省の指針も、腰痛予防には作業管理・作業環境管理・健康管理・労働衛生教育を「総合的かつ継続的に」進めることが必要だとしています。

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よくある質問

介護現場の腰痛はどうすれば減らせますか?

移乗・入浴介助では人力だけで抱え上げず、リフトやスライディングボードなどの福祉用具を正しく使うことが基本です。ベッドの高さ調整や、利用者に身体を近づけ膝を使う動作も有効です。ベテラン職員ほど自己流の癖が定着しやすいため、定期的な動作の見直しが役立ちます。

製造業の立ち作業による腰痛対策は何がありますか?

作業台の高さを見直して前かがみを減らす、疲労軽減マットやフットレストを導入する、立ち作業と座り作業を交互に組む、重量物は分担制にするなどが有効です。どの作業にどれだけ負担がかかっているかを洗い出すことが対策の出発点になります。

運送・倉庫業の腰痛はどう防げばよいですか?

荷役作業では腰を落として荷物を身体に近づけ、膝を使って持ち上げます。台車やパレットで直接持ち上げる回数と重量を減らし、荷台からは飛び降りずステップを使います。長時間運転では休憩ごとに姿勢を変え、簡単なストレッチを取り入れることが有効です。

腰痛と転倒はどう関係していますか?

滑りやすい床や段差、暗い作業場といった環境要因は腰痛の原因であると同時に転倒の原因でもあります。また転倒の瞬間に腰へ過大な負荷がかかり腰痛が発生することもあります。環境改善と、筋力・バランス・歩行など身体機能の把握を一体で行うことが重要です。

プライズネスの健康経営サポートは医療行為ですか?

いいえ。医療行為や治療ではなく、理学療法士の専門的な視点を活かした、企業向けの身体機能評価・作業動作評価・予防支援サービスです。

出典:厚生労働省「腰痛予防対策」